後藤健生の「蹴球放浪記」第286回「新スタジアムに残された“記憶”」の巻(2)U-20日本代表がW杯を戦ったチリ首都スタジアムに書かれた「日本のスポーツ界」が心に刻みたい言葉の画像
セントラル・スタジアムのメインスタンド。古いスタジアムの外壁が見える。提供/後藤健生

 サッカーは日々、進化している。プレーはもちろん、スタジアムなど取り巻く環境も変化し続けている。だが、だからと言って、過去は決して捨て去っていいいものではない。蹴球放浪家・後藤健生は、ロシアW杯で日本戦が行われたスタジアムに「フットボールの精神」を見た!

■改築される「明治神宮外苑」で残すべきもの

「蹴球放浪記」の第159回でご紹介したように、モスクワでは過去の鉄道の記憶を残すための素晴らしい鉄道博物館を見学しましたし、それ以外にも今ではもう使われなくなった古い駅舎がいくつもちゃんと保存されていました。

 日本でも、スタジアムを改築するときにも、このようにスタジアムの過去の記憶を大切にしてほしいものです。

 旧国立競技場時代にメインスタンド中央に掲げられていた長谷川路可画伯作成の壁画が、現在はバックスタンド・コンコースに保存されていますが、もっと旧スタジアムの記憶をあちこちに残してほしかったものです。

 明治神宮外苑ではこれから野球場(明治神宮野球場)とラグビー場(秩父宮ラグビー場)が改築されますが、たとえば野球場の外周の連続アーチなどはデザインとしてぜひ残しておいてほしいものです。

 先日、U-20ワールドカップを見ていたら、サンチャゴのエスタディオ・ナシオナルに「過去の記憶を持たない民族に未来はない」といった言葉が書かれていました。今の日本のスポーツの繁栄は、過去の選手や指導者たちの努力があってのものです。スポーツ界は、もっと過去の記憶に向き合うべきだと思います。

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