■保存された「古いスタジアムの外壁」の意味

 エカテリンブルクは、また、古くからサッカーが盛んな街でした。それはつまり、工場労働者がサッカーという新しいスポーツを好んだからでした。

 だいたい、ヨーロッパ大陸の国々では古くからの伝統を尊ぶ“保守主義者”はフットボールを「英国生まれの遊び」と見なして嫌い、その国固有のスポーツを好むものです。

 たとえばドイツなどもそうで、伝統主義者たちが反対する中でフットボールに取り組んだのは若い学生や労働者。そして、近代的な企業を立ち上げた資本家も労働者たちのフットボールを支援しました。ユダヤ系の人たちも活躍します。

 ロシアでも同じ。近代的な工場を建設した新進気鋭の資本家や労働者がフットボールに熱心でした。近代工業を発展させた資本家の中にはロシア正教会の「古儀式派」に属する人が多く、彼らは西欧のプロテスタントと同じく勤勉さを大切にしていたのだといいます。

 近代工業が発展し、そうした若い資本家や労働者が集まっていたからこそ、この街にフットボールは根づいたのです。

 あの保存された古いスタジアムの外壁は、そんなエカテリンブルクの歴史を忘れないようにという意味だったのでしょう。

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