後藤健生の「蹴球放浪記」第286回「新スタジアムに残された“記憶”」の巻(1)日本代表がセネガル代表とロシアW杯で戦った工業都市のスタジアムに共存する「過去と未来」の画像
ロシア・ワールドカップ、日本対セネガル戦の入場券。提供/後藤健生

 サッカーは日々、進化している。プレーはもちろん、スタジアムなど取り巻く環境も変化し続けている。だが、だからと言って、過去は決して捨て去っていいいものではない。蹴球放浪家・後藤健生は、ロシアW杯で日本戦が行われたスタジアムに「フットボールの精神」を見た!

■ロシアW杯で「日本」が戦った都市

「エカテリンブルク」という地名をご記憶でしょうか? 2018年のロシア・ワールドカップのときに日本対セネガルの試合が行われた、人口約150万人の工業都市です。

 今回は、そのエカテリンブルクのスタジアムの話です。

 ロシアでは1917年3月(ロシア歴=ユリウス暦では2月)にウラジーミル・イリッチ・レーニンが率いるボリシェヴィキ(後のソ連共産党)が武力革命を起こして権力を掌握。それまでロシアを統治していたロマノフ王朝の第14代皇帝ニコライ2世の一家は退位して囚われの身となり、その後、エカテリンブルクで全員が処刑されました。その現場の跡地には、現在はロシア正教の教会が建てられていて、多くのロシア人が訪れています。

 セネガル戦があったのは、そのエカテリンブルクのスタディオン・セントラルニイ(セントラル・スタジアム=現エカテリンブルク・アレーナ)でした。2018年大会では日本の試合を含めてグループステージの4試合が行われました。

 スタジアムの最大の特徴というか驚きだったのは、両ゴール裏にそびえ立つ、合計で1万2000席を収容する巨大な仮設スタンドでした。大会当時の収容力は仮設スタンドを含めて3万5696人。大会後には仮設スタンドを撤去して、2万3000人ほどのスタジアムにする計画でした。

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