■走る姿がきれいで「魅力的だった!」
後藤「それこそ、釜本さんが対戦した中で一番強いDFだと言っていたハンス=ゲオルク・シュバルツェンベクがいたバイエル・ミュンヘンや、アーセナルといった一流クラブを相手にしても、まったく引けを取らなかったのはすごいことですよ。相手にとってはプレシーズンの親善試合だったとしてもね。
どんな競技でも日本人選手はフィジカル的にヨーロッパやアメリカの選手にはかなわないことを前提に、じゃあ、どうしようかと考えていた時代に、釜本さんはフィジカル的にも互角、あるいは対等以上にやれるつもりでプレーしていた。その時点で規格外だと思いますよ。現在ではプロ野球の大谷翔平が、メジャーリーグに行ってもフィジカル的に互角以上にやっているじゃないですか。釜本さんも当時のヨーロッパで必ずしも同じようなことができたかは分からないけど、フィジカル的に引けを取らずにできたというのはすごいことだよね」
大住「実際にヨーロッパに行っていたら、大谷クラスの活躍ができていたかもしれないということですか」
後藤「可能性はありますね。だって、メキシコ・オリンピックの後、20代後半の選手として体の状態が一番良いときにブンデスリーガに行って点を取る経験を積んでいたならば、すごい選手になれたはずですよ」
大住「ボールを止めて蹴るという一連のプレーが、釜本さんの一番の本領だったとは思いますが、中盤ですごくスピード豊かなプレーをするという印象もあるんですよね。ヤンマーでも、ふだんは中盤にいるネルソン吉村さんよりも低い位置にいて、吉村さんに20mから30mくらいのグラウンダーの強いパスをぶつけて、リターンを受けて最終ラインを突破してシュートを打つプレーを見たんです。あの流れるような走り方、走る姿がものすごくきれいで、魅力的だった記憶があります。日本では圧倒的な強さがあったけど、自分より大きな選手がゴロゴロいるドイツでああいうプレーができたなら、また違う釜本さんの姿が見られたんじゃないかなと思えて、残念です。どんな時代でも、釜本さんがいれば日本代表はもっと強かったはずだと、いつも後藤さんと話しますよね。今、釜本さんが日本代表にいれば、余裕でワールドカップでも優勝できるんじゃないかと思うくらいですよ」
後藤「それはそうだよ。三笘薫が左サイドを突破して、右からは久保建英が相手を引きつけて、それで真ん中に釜本さんがいたら、点を取るなんて簡単じゃないですか」