鬼木達監督が語った「足りなかった」2つのこと、3ゴールに結びついた「成功体験」との決別【「首位」鹿島アントラーズを「最下位」横浜F・マリノスが撃破した意味】(2)の画像
もともと「個」の能力が高い横浜F・マリノスはある意味、「割り切った」戦いで勝利を手にした。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 J1前節の第18節で、大波乱が起きた。7連敗中の最下位・横浜F・マリノスが、7連勝中の首位・鹿島アントラーズに勝利したのだ。最下位チームの逆襲は、どんな今後を示すのか。サッカージャーナリスト後藤健生が、「波乱の一戦」を徹底検証する!

■連続した「軽い守備」

 試合後の会見で、鹿島アントラーズの鬼木達監督は「目を向けるべきは自分たち」と語った。試合開始直後から(失点する前から)、攻守にわたって迫力がなく、スピードも足りなかったと言うのだ。

 まさに、ゲーム展開は僕の目にもそのように映った。

 横浜F・マリノスの3つのゴール。スピードあるパスがつながった。1点目であれば、加藤蓮がドリブルで持ち上がっている間に、しっかり左サイドで遠野大弥がポジションを取っており、さらに永田勝也もこぼれ球に反応した。

 2点目では、喜田がアンデルソン・ロペスに速いパスを通したことによって鹿島のDFの反応を上回った。3点目は、ヤン・マテウスのシュート技術を褒めるべきだろう。

 だが、そうした横浜FMの良さを引き出してしまったのは、鹿島の守備が甘かったからだ。まさに鬼木監督のいうように「迫力もスピードも足りなかった」。

 1点目。GKからのパスは素晴らしかったが、ドリブルで持ち上がる加藤に対するチェックは足りていたのだろうか? そして、逆サイドに展開されたとき、素早く反応したのは横浜FMの選手のほうだった。

 2点目。トップのアンデルソン・ロペスにボールが入り、リズム良く植中朝日からヤン・マテウスとボールが回ったとき、鹿島の守備陣は完全に後手に回ってしまい、ヤン・マテウスはノープレッシャーでシュートを狙えた。

 3点目も、まずアンデルソン・ロペスが中盤で鹿島のチェックをかわしてドリブルで上がってくるところで、次のDFが誰も行けていなかったし、ヤン・マテウスがシュート体勢に入ったときに、DFがもう1メートル寄せていれば、あれほど余裕を持ってシュートを狙うことはできなかったはず。

 どれも、過去17試合で12失点と、守備の固さでしぶとく勝利を重ねてきた鹿島とは思えない、軽い守備の連続だった。

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