■「劣化した」攻撃サッカー
横浜FMの攻撃は、たしかに素晴らしかった。長いボールを使って前に向かう推進力があり、そんなスピードある攻めの中でもパスが正確に回った。
横浜FMが攻撃サッカーを完成させたのは、2018年にアンジェ・ポステコグルー監督(現トットナム)が就任してからだった。
両サイドバックがインサイドMFの位置に上がって、中盤でボールをつないで、アップテンポの攻めが効果的だった。相手は、横浜FMの陣形の変化に対応できず、ポステコグルー体制2年目の2019年には34試合で68得点という攻撃的サッカーでJ1チャンピオンとなった(今では、サイドバックがバイタルエリアまで上がってくるなど、中学生のチームでも普通にやっているが)。
以後、横浜FMは攻撃サッカーを追求し、2022年にもケヴィン・マスカット監督の下で優勝を遂げた。
しかし、その後は横浜FMの攻撃サッカーは次第に劣化していった印象が強い。攻撃はアンデルソン・ロペスなどブラジル人FWの得点力に頼りきりになってしまっており、ポステコグルー時代のようなパスをつないだ集団的な攻撃は必ずしも有効ではなかった。
時代はパス・サッカーの時代から、カウンター・プレス全盛の時代に移っていた。
前線から激しい守備で相手ボールを奪ってショート・カウンターで仕留める……。そんなスタイルのヴィッセル神戸などが台頭。2010年代終わりから20年代初めにかけてパス・サッカーでJリーグをリードしていた横浜FMや川崎フロンターレはなかなか勝てなくなっていった。