■得点後も持てないボール
だが、序盤の鹿島はビルドアップの意識が強すぎるあまり、攻撃が停滞。安西がパスコースを探しているうちにボールをさらわれ、カウンターを食らうシーンをいきなり露呈してしまう。前半6分には濃野の背後に相手FW草野侑己の侵入を許し、そこからマイナスクロスを入れられ、大卒2年目の大型FW久保征一郎に先制点を奪われる。開始早々、暗雲の立ち込める展開となった。
それでも、9分後には得意のリスタートから1点を返す。柴崎の右CKのクリアを植田拾い、濃野が豪快なミドルを放ち、ゴール前で田川がコースを変えるという形だった。昨季はケガやコンディション不良で苦しんだ背番号11がゴールで期待に応える形となった。
これで勢いに乗り、2トップを軸に連動性の高い攻めを見せられると思いきや、前線になかなかボールが入ってこない。「特に守備の時は距離感が遠かった」と知念は言う。
「前線の選手は個が強いので、なるべく攻撃に専念させてあげたいけど、チームとしてプレッシャーに行かなきゃいけない。前から行った時、自分たちボランチもついていかないといけないのに、それがうまくいかなくて、ボールを渡せる回数が減った」と彼は反省していた。守備のバランスの悪さについては鬼木監督も指摘していた点。前線の豪華タレントを生かすためにも、いい形でボールを奪う形を作ることが肝要だ。
その問題点も大きかったが、シュートゼロに終わったレオ・セアラと荒木は自分のよさを出せる形を見出せていない印象が拭えなかった。鈴木優磨が引いてタメを作り、レオ・セアラが高い位置で待っていることが多かったのだが、ボールが来ずに孤立しがち。セレッソ大阪時代はサイドから効果的なクロスが入ってきて、それを決める形が多かったが、そういった前例も踏まえながら、彼の得点能力を生かせるようなパターンを作り上げていく必要があるだろう。
荒木にしても、インサイドに絞ってボールを触ろうという意識は見られたが、トップ下に入っていたFC東京時代のような輝きは放てていない。本人も本来は中央専念がいいのだろうが、今の鹿島は4-4-2がベース。多彩な役割をこなせるようにならないと、より高いレベルを目指せないという指揮官やコーチングスタッフの考えもあって、あえて家長的な役割を託されているのだろうが。自由度が高すぎると迷いも生じやすい。それは攻撃陣全体に言えることだ。