■センターバックの「新たな役割」とは…

 しかし、バッカンの貢献は、19ゴールにとどまるものではなかった。「革命後」の守備の混乱のなかでプレーしながら、彼は「センターハーフの役割を変えたらいいのではないか」と考えていた。そこでチャップマンに相談した。チャップマンはその発想に大きなヒントを得て、センターバックをこれまでの「中盤の王者」の仕事から解き放ち、「センターフォワード・ストッパー」の役割を専門に担わせることにしたのだ。

「センターハーフ」を2人の「フルバック」の間に下げ、同時にFWのひとり(インサイドライト)に「ハーフバック」の役割を担わせる。いわば「3-3-4」システムである。そして、それをさらに発展させ、FWの1人(インサイドレフト)も中盤に引かせ、2人の「ハーフバック」と2人の「インサイドフォワード」で「2-2」のラインをつくって中盤を強化する。必然的にフォワードは両ウイングとセンターフォワードの3人となる。「WMシステム」の誕生である。

 このシステムを引っ提げてアーセナルは1930年代には無敵のチームとなり、3連覇を含む5回のリーグ優勝を遂げる。アーセナルの快進撃とともに他のチームもWMシステムを採用するようになり、守備の人数と攻撃の人数が完全に釣り合った(全選手が互いにマンマークをする)WMシステムは欧州のサッカーを席巻することになる。

PHOTO GALLERY ■【画像】サッカーに革命をもたらした「変更」と【図解】「革命前」と「革命後」のオフサイドライン
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