■パシエンシア投入「攻撃力アップ」を図るも…

 問題は、広島の選手たちである。前半、あれだけ素晴らしい内容の試合をしておきながら、1点を先制されたことで焦りが生じ、そして士気が落ちてしまったのだ。

 いくつもの要素が関わっていたように思える。

 一つは、広島がリーグ戦で連敗を喫していたこと。広島は第31節では横浜F・マリノスに6対2で大勝。第32節では、優勝争いのライバルだったFC町田ゼルビアにも完封勝利(2対0)と好調を維持していた。ところが、第34節には湘南ベルマーレ、35節には京都サンガF.C.と、ともに下位の相手に連敗を喫していた。

 その「連敗」という苦い記憶が、浦和に1点を先制されたことによって選手たちの脳裏によみがえってきたのだろう。

 もちろん、優勝争いという重圧もある。勝点でヴィッセル神戸にリードされている。ということは、「もう勝点を落とせない」という意識が強くなる。ハーフタイムの間に、選手たちが神戸は引き分けに終わったという情報を得ていたかどうかは分からないが、もし、この結果が耳に入っていたら、また逆に「勝利すれば首位奪還」という状況が気持ちを乱したのかもしれない。

 そうしたメンタル面の影響が大きかったのだろうが、もう一つ、疲労という要素が加わっていたのかもしれない。

 浦和との差が2点に開いた後、膝に手を当てたり、下を向く選手が増えていった。広島を率いるミヒャエル・スキッベ監督は、ゴンサロ・パシエンシアなど強力な交代選手をピッチ上に送り出して攻撃力アップを図ったが、攻撃の迫力が少しだけ足りなかった。

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