■プラティニが見守る中での「待望の初勝利」

 サンマリノ代表が歴史的な初勝利を記録したのは、代表活動が始まってから14年後、2004年の4月28日のことだった。相手はリヒテンシュタイン。会場はやはり「オリンピコ」だった。

 観客がたった200人しか集まらなかったこの試合を、当時FIFAとUEFAの理事であり、フランス・サッカー協会副会長でもあったミシェル・プラティニが、たまたま見に来ていた。「もう走らなくていい」ボニーニといっしょにタバコを吸うためだったのだろうか…。

 前半5分、マルコ・ドメニコーニが倒されてサンマリノにFKが与えられる。場所はペナルティーエリアの左外。ゴールまで23メートルの距離である。ボールのところに立ったのは背番号10、この試合で初めてキャプテンを任されたアンディ・セルバだった。

 セルバは、セリエCの「スパル」でプレーする、このときのサンマリノ代表唯一のフルタイムプロだった。スタンドにプラティニがいることを、彼は意識したのだろうか。小さくボールを動かし、味方が止めたところに一歩踏み込んで右足を振り抜くと、ボールはゴールの左上隅に突き刺さった。まさに「プラティニ・スタイル」のゴール。サンマリノ代表65試合目での初勝利だった。

 ただ、この試合後に、サンマリノ代表の最も暗い時代が来る。その年の9月、「セルビア・モンテネグロ」に0-3で敗れた試合から、10年後、2014年の10月、スイスとのEURO2016予選(0-4)まで、なんと61連敗という記録をつくるのである。そして翌月にエストニアと0-0で引き分けた後も、2020年まで39連敗を記録する。「FIFAランキング最下位」はダテではないのである。

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