■山根視来、登里享平、瀬川祐輔、大島僚太の心配り
平常心を保っているとはいえ、試合に出たことで心を奮い立たせたことも多かった。両親からは「いつも通り頑張ってきて」と言葉を試合前に受けたことを明かし、これまでの恩師には試合翌日に電話をしたという。デビューの報告と感謝を直接伝えたかった。
また、すでにチームを去っている先輩からのメッセージも心を熱くした。アメリカでの活躍を求めて海を渡った山根視来からは「おめでとう。ここからだな」という、シンプルだが重い2つの言葉が。今季からセレッソ大阪に移籍した登里享平からは、試合前に、「自信を持って頑張ってこい」と勇気づけられた。
もちろん、チームメイトも早坂の心を解そうと奔走した。早坂の緊張を解すべく、スタジアムへの移動時などに瀬川祐輔が動いていたと、チーム内のある選手は語っている。そして大島僚太は、試合に早く入れるように最初にボールを蹴りたいかと早坂に尋ねたという。もしそれで落ち着くのであれば、いったん、最後尾までボールを回そうとしたのだ。
そのデビュー戦は、早坂の努力と、これまでの指導者と、そして、多くの先輩の心配りによって迎えたものだった。だから、これからの活躍を見据えて、早坂はこう力強く語る。
「本当にスタートラインに立った」と――。
(取材・文/中地拓也)