■胸が熱くなる「大久保嘉人が去りし後」の日韓戦

「数的優位」でも「劣勢」にせず、逆に圧倒的な「優勢」に進めた見事な試合を見た記憶がある。2003年12月の第1回東アジア選手権最終日。日本代表対韓国代表の試合である。4チームによる総当たりの大会。日本と韓国はともに2勝だったが、得失点差で韓国が上回り、引き分けなら韓国の優勝となる。会場は、東京の国立競技場である。

 この試合、FW大久保嘉人セレッソ大阪=当時、以下同)が前半18分に2枚目のイエローカードで退場になり、日本は前年のワールドカップで4位の韓国を相手に、残り72分間を10人で戦わなければならなくなった。日本代表を率いるジーコ監督は前半は交代を使わず、「3-4-1-2」という形だったチームを「3-4-1-1」という形で保ってまず試合を落ち着かせ、カウンターでチャンスをうかがった。そして前半の終盤にピンチはあったが、0-0のままハーフタイムにこぎつける。

「数的劣位」でも、後半45分間のうちに得点して勝たなければならない日本。ジーコ監督はDF中澤佑二(横浜F・マリノス)とMF福西崇史(ジュビロ磐田)に代えて攻撃力のあるMF本山雅志(鹿島アントラーズ)とMF藤田俊哉(ユトレヒト)を投入、システムを「4-4-1」に変更した。中盤の4人は「ダイヤモンド型」に並び、FW久保竜彦(横浜FM)と本山を「縦の関係」にした。

 日本は果敢に攻め、連続してチャンスをつくった。特に残り時間が25分を切ってからの日本の攻撃はすさまじく、韓国を自陣ゴール前にくぎづけにした。終盤にはDFの山田暢久(浦和レッズ)をFW黒部光昭(京都サンガF.C.)に代えて「2-4-3」という大胆なシステムに変更、攻勢をさらに強めた。最終的に韓国のゴールをこじ開けることはできず、0-0で引き分けて優勝は逃したが、10人とは思えない後半の火のような攻撃は多くのファンの心を打った。

「10人になったけど、勝ちにいくぞ。一人ひとりが1.5倍以上走れ、いつも以上の気持ちを出せ!」

 ハーフタイムにジーコ監督はそう檄を飛ばしたという。

 試合の残り時間はほぼ同じだが、今回のU-23アジアカップの中国戦とは、試合の状況が違うので、一概に比較することはできない。しかし、「数的劣勢」の戦いとは、チームのメンタリティの問題でもあることはよくわかるのではないか。リスクを冒して攻撃的にプレーするのはバカげている。しかし、10人になってもただ「守ろう」とするのではない、より賢い戦い方が中国戦のU-23日本代表にもあったはずだ。

 どうすれば違う展開にできたか、チームとしてしっかりと振り返らなければならない。そして、この経験を、個々の選手の成熟と、今後の試合にしっかりとつなげていかなければならない。

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