サッカーでは、思いもよらないことが起こるから面白い。11人対11人で戦うはずが、そうではなくなることもある。U-23日本代表は現在、パリ五輪出場権を目指して奮闘中だが、その初戦で思わぬ苦戦を強いられた。相手より1人少なければ苦戦は必定であるが、単なる不運で済ませてよいものか。サッカージャーナリスト大住良之は、あえて「否」と異議を唱える。
■GK小久保の「ビッグセーブ」と「大問題」
GKの小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)はこの試合のヒーローと言って良い活躍ぶりだった。ハイボールにも安定していたし、シュートへの対応力では非凡と言っていいものを見せた。ただ、いくつかまずい面もあった。
その第一は、10人になった直後からあからさまな時間かせぎを始めたことだ。何でもないボールを拾うと、そのまま前に倒れ込んでしばらくそのままだった。これが後半40分を回ってのプレーなら問題はない。しかし、前半のなかばという時間帯にこうした行為に走ったことが、チーム全体の足を止め、攻撃に移るリズムを壊したのではないか。
第二には、前からボールを奪いにくるようになった中国に対し、自分のところにきたボールの大半を最前線にひとり残る細谷真大(柏レイソル)めがけて蹴ってしまったことだ。細谷はヘディングで競り負け、収まったとしても周囲にサポートがいない状況ですぐにボールを奪われた。
細谷がほとんどボールに触れず、前線に起点ができなかったことは、日本を苦しくした大きな要因だった。小久保やDFラインから前に出すパスが直接的に細谷めがけて送られたためだ。その前にワンクッション、もう少し冷静にフリーの味方につなぐことができれば、その次の細谷へのパスも互いにタイミングを合わせられるものになり、サポートもできて、もっとしっかりとした攻撃ができたはずだ。