■「物理的な速さ」に「戦術的な速さ」で対抗
中盤で優位を保てれば、他のポジションの選手も思い切ったプレーができる。
中盤で良い守備ができれば相手のパスコースが限定されるので、最終ラインも狙いを絞りやすかったはずだ。ウクライナのロングボールにも的確に対処し、センターバックの馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)あたりが積極的にパスをカットする場面も何度もあった。
一方、攻撃陣も中盤が安定したことによって思い切ったプレーをすることが可能となり、前半の立ち上がりからチャンスを作り続けた。
攻撃陣で存在感を発揮したのは、やはり10番を付ける佐藤恵允(ヴェルダー・ブレーメン)。左サイドの佐藤がしかけることによって、相手のストロングポイントである右サイドバック、オレクシー・シチの攻撃参加を抑制する効果もあったし、日本の2ゴール目は佐藤の粘り強さからこぼれ球が生まれ、田中聡(湘南ベルマーレ)に渡って生まれたものだった。
マリ戦でも、日本は前半の立ち上がりには完全にマリを上回り、右サイドから山田楓喜(東京ヴェルディ)が蹴り込んだFKをマリの選手たちが処理できず、混戦の中から平河悠(FC町田ゼルビア)が蹴り込んで、キックオフからわずか1分50秒で先制ゴールが生まれた。
そして、その後も日本チームの攻撃はいくつものチャンスを生み出した。
この試合で日本が狙っていたのは、センターバックの西尾隆矢(セレッソ大阪)と高井幸大(川崎フロンターレ)からMFの山本理仁(シントトロイデン)やトップの藤尾翔太(FC町田ゼルビア)、植中朝日(横浜F・マリノス)らに強いボールを当て、そのボールをワンタッチでつないでサイドに展開するパターンだった。
マリが個人的な走るスピードやキック・スピードといった「物理的な速さ」を武器にしたのに対して、日本はボールを速く動かす「戦術的な速さ」で対抗しようとしたわけだ。