■パスの出し手である「DFに求められる」判断能力

 だが、マリ戦ではこの攻撃パターンは「諸刃の剣」でもあった。

 パスを出す側のDFがしっかり状況判断できないままに“くさびのパス”を入れようとしたため、パスをマリにカットされてピンチを招いてしまったのだ。

 1点を先制した直後の5分には、西尾が蹴ったボールを拾われてピンチを招いた。この場面ではママドゥ・サンギャレのシュートがポストに当たって事なきを得たが、その後も何度も同じようなピンチが生まれ、34分にもやはりパスの乱れを狙われてママドゥ・サンギャレの同点弾を許してしまった。

 受け手がマークされているような場面、あるいはパスを受けられたとしても苦しい体勢になってしまうような場面……。そんな状況で無理にパスを付けようとするから、ピンチが生まれてしまうのだ。

 そうした状況では「パス」という選択はいったんキャンセルしてGKに戻してもいいし、割り切ってロングボールを蹴ってしまってもいい。

 これからも、そうしたパターンを使おうというのなら、パスの出し手であるDFがそうした判断能力を身に着けていく必要があるだろう(あるいは、ディフェンスリーダーとなるオーバーエイジを起用するか)。

 ただ、もしウクライナ戦のように中盤を支配できるのであれば、最終ラインからの縦へのパスはもっと有効になるだろうし、パスをカットされることも少なくなるはずだ。

 中盤を優位に展開できれば、攻め手はどんどん広がっていく。そうした意味で、非常に戦術眼の高い藤田と松木のボランチ・コンビには大いに期待したい。

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