■ドイツ発祥「カウンター・プレス」と川崎の「苦悩」
「ティキタカ」に代わって一世を風靡したのが、ドイツ発祥の「ゲーゲン・プレス(カウンター・プレス)」だった。
守備の強度を上げ、相手のパスを高い位置で奪って、相手の守備が整わないうちに一気に相手を攻め崩す、ある意味で非常に効率の良い戦い方だ。「カウンター・プレス」は、たちまち世界の強豪クラブが採用し、そして代表チームの戦いにも取り入れられていった。
こうして、「カウンター・プレス」はすっかり世界の標準スタイルとなったが、それがいつまで続くのか、それとも、そろそろまた新しいスタイルが登場するのか、世界のサッカーはそんな時代の中にいる。
そもそも、互いにプレスをかけ合う強度の高いサッカーは、エンターテインメントとして、どうなのだろうという根源的な疑問もある。
川崎のパス・サッカーは明らかにバルセロナの「ティキタカ」をほうふうつさせるものであり、その日本版「ティキタカ」は2020年代に入ってもまだ有効だった。
だが、三笘薫ら川崎の主力選手たちが次々とヨーロッパのクラブに移籍していったことによって、川崎の攻撃力は明らかに衰えていった。新しい選手たちを使ってパス・サッカーのスタイルを継承すると同時に、鬼木達監督は新しい要素を取り入れようとしたが、やはり全盛時ほどの破壊力は取り戻せなかった。
そして、それと入れ替わるように、前線からプレスをかけて、ボールを奪ってカウンターで勝負しようというチームが次第に増えていった。