■Jリーグ元年の「忘れられない」人生最後の試合

 こうしたチームに共通するのは、資金力が強いわけではなく、補強に大金を費やすことができない代わりに、監督たちが自らの哲学と信念でチームを徹底的に鍛え、相手を研究し、どんな相手でも、ホーム、アウェイに関係なく、勝利を目指して戦いを挑んでいることだ。それが選手たちの熱気と集中力につながり、思いがけない結果をもたらすのを、これまでも私たちは見てきた。そして、こうしたチームの監督、選手たちは、今回のアジアカップで刺激を受け、勇気づけられ、意を強くしたのではないだろうか。

 アジアカップの準決勝、韓国を相手に一歩も引かず2-0で快勝したヨルダンの戦いぶりを見ながら、隣にいたヨルダンのベテラン記者が「ヨルダンの選手たちにとっては、Match of their livesだ」とつぶやいた。「人生最高の試合」のようなニュアンスだっただろうか。

 1993年にJリーグがスタートしたとき、サッカーをあまり見たことがない人々を熱狂させたのは、派手な演出やスター選手たちではなかった。まるで「人生最後の試合」のように90分間に集中し、走り、戦い抜く姿が、理屈なく心を打ち、Jリーグへの関心を呼び、さらに増幅させたのだ。

 もちろん、どんなに奮闘しても、うまくいかないときもある。思いとは逆の試合結果が続くこともある。しかし、その試合で100%チャレンジし、戦い続けたことは、必ず人々の心を打ち、記憶に残る。今季のJリーグでは、そうした試合を見たい。そして、そうしたチームの中から、ヨルダンのように、みんなの期待をかき集めて優勝争いに加わっていくチームが出ることを期待したい。

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