■「止める」「蹴る」を実践する三笘のプレー
――現在の三笘選手をご覧になられて、その教えをどこまで体現していると思われますか?
実践できていると思います。彼が慌てたところを見たことがないですよね? なぜなら、彼は自分の場所を持っていて、そこで、しっかりとボールを止めているから。ボールをちゃんと止めることができれば、相手を見る余裕が生まれるので、冷静に次の動きを選べるんです。
私から見て、三笘選手のドリブルのすごさが分かるポイントは、2つあります。まず1つ目は、自身の体とボールを離しても運ぶことができる。ここで言う、「運ぶ」というのは、“次のタッチでなんでもできる位置までボールを動かす”ことです。これまでの彼のプレーを見て分かるように、彼は、ボールをポンと蹴って出すような独特の“長いドリブル”を駆使していますよね? あれは、相手とスピード勝負をする運び方で、それがプレミアリーグでも通用しています。
そんな彼のドリブルが警戒されるようになると、次は、2人を相手にする場面が増えました。つまり、これまでよりも選手が密集していて、ボールが出しにくくなる場面ですね。すると、彼は、今度は自身の体とボールを離さずに運ぶようになったんです。これが、2つ目のポイントです。
相手の状況を見て判断し、この2つの運び方を使い分けられることが、三笘選手のすごさと言えます。この武器をもっと高い次元に持っていければ、さらなる活躍が期待できるでしょう。
#2「三笘薫が学んだ“止める”“蹴る”練習法」に続く。
かざま・やひろ
1961年10月16日、静岡県生まれ。清水商業高校時代に日本ユース代表として79年のワールドユースに出場。筑波大学在学時に日本代表に選出される。卒業後、ドイツのレバークーゼン、レムシャイトなどで5年間プレーし、89年にマツダ(現サンフレッチェ広島)に加入。97年に引退後は桐蔭横浜大学サッカー部、筑波大学蹴球部、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。2021年よりセレッソ大阪のアカデミー技術委員長に就任。