■選手の“目をそろえる”指導法

――三笘薫選手の著書『VISION 夢を叶える逆算思考』でも、三笘選手自身「U-12時代に一番よく練習したのは“止める”“蹴る”だった」と語っています。この「止める」「蹴る」とは、どのような考えなのでしょうか?

 グラウンド上の選手たちの“目をそろえる”ための指導法です。同じグラウンド上にいても、見えている景色は各個人で違います。それをそろえるためには、技術を定義づけることが必要でした。

 例えば、「自分の一番良い位置でボールを止めなさい」と教えるとき、その一番良い位置とは、具体的にどのような状態を指すのかを定義づける。そうやって選手たちに定義を教えたら、その次は「基準」を教えます。基準とは、正確に何回できるのか、どれくらいの速度でできるのかといった具体的な数値です。これらを積み重ねて、選手たちの目が揃うようになると、「このタイミングで動けば、中村憲剛からパスが出る」といった感じで、チーム全体で高度な連携ができるようになり、高スピードのサッカーができるようになります。

 はじめはなかなか理解されませんでしたが、トップ選手から下に徐々に浸透していき、最終的にユースの選手にも伝わるようになりました。ただ、私個人の功績ではなく、チーム全体でこの指導を継続し、徹底した結果だと思っています。

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