■ドリブルのポイントは「足」「ボール」「地面」の3つの点

――利き足ドリブルの“点で触る”という感覚をもう少し分かりやすくお願いします。

 例えば、薫の場合は、中指と薬指の前にボールを置く感覚があって、そして、いざ触る時に小指の使いやすい点に当てるというイメージを持っていたと思います。つまり、面ではなく、指の点でボールを扱う。そう意識することで、神経の100%を集中することができて、細かいボールタッチができるようになります。

ポイントは足、ボール、地面と3つの点を意識させること。実は、地面の点を意識するのが重要で、ボールと軸足の位置に対して、この点にボールが来ればなんでもできるというポイントを探す。そこまで意識して、はじめてボールを扱えるようになるんです。

それを身につけるために、ボールを止める瞬間はどの点で止めるべきか、ボールを運ぶときは、どこの点から触るべきか。もっと言うと、ボールを運ぶ時に無回転にしてみよう、じゃあ次は回転をかけてボールを運んでみようという感じで、常に意識させていました。後に薫もそれをすごく理解していて、大学リーグ戦後に僕が「さっきのタッチだけど……」なんて指摘すると、薫はすかさず、「あの場面の、あのタッチですね」って感じで、ミスに対してすぐに通じあえましたよ。

――3点を意識する。三笘選手の著書にも、自身のドリブルについて詳細に書かれていて“ドリブラー必読の書”となっていますが、ドリブルの原点はそこにもあるのかもしれませんね。具体的に、どのような練習をされていましたか?

 1対1でボールを止めて蹴る、コーンドリブルをするといった基本的な練習です。ただし、常に、どの点で触るのか、同じ場所でちゃんとボールを触れているかを意識させました。毎日、ボールに数千回触る中で常に意識させます。世界で通用するために、薫たち以下の世代にはかなりシビアに要求していました。

 第4回では、“三笘の1ミリ”を生んだ教え子たちに思うことを語る

 

たかさき・やすし
1970年4月10日、石川県生まれ。大学卒業後、サッカー指導者の道に進むと、母校の茨城県立土浦第一高校、筑波大学、東京大学のコーチを歴任。その後、2002年にJリーグ・川崎フロンターレの下部組織のコーチに就任し、2006年には川崎フロンターレU-12の立ち上げにかかわり、2011年まで監督を務めた。現在はジュニアユースクラブ・フガーリオ川崎のアドバイザー、川崎市立橘高校コーチ、尚美学園大学コーチとして、ユース年代の育成に携わっている。

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