■「いつもはしないようなプレーをできた理由が分かりました」

 天皇杯2回戦で川崎が勝利すると、チームは恒例の“バラバラ”を歌うことに。その“先導役”を務めることが多かった山田新がメンバー入りしていなかったため、誰が歌い始めるのかで選手とサポーターで視線を動かす時間があった。

 そのとき、この日のMVPである遠野大弥が大関を指名したが、「試合に出てないのに、こんな大役を引き受けられない」という気持ちが心中にあって、一度は辞退した。それでも、レアンドロ・ダミアンが強く大関を促したことで、サポーターの前に立つことになった。

「拡声器を使ってやろうとも思ったんですけど、ここは新君からの流れがあると思うので」

 ご存じの通り、大関は拡声器を使う素振りを見せながらしっかりと地声を鳴り響かせた。それに続いて、サポーターも歌声を張り上げた。

 この日、等々力競技場に集まった観客数は約5千人。大関はこの数字を出したうえで、「リーグ戦で観客が4倍になる歓声を聞きたいです。昨日の歓声だけでも奮い立ったんですけど、それの4倍ってなったら……」と、またも目を輝かせた。

 松長根悠仁が初めてプロ公式戦に出た時、このルーキーDFはふだん、練習では見せたことのないプレーを見せて観客を沸かせた。具体的には、スライディングしてボールを奪うと、そのまま前線に持ち上がり、パス交換しながらゴール前に迫ったのだ。

 大関はその直後、本誌記者に「ナガネのあんなプレーは初めて見ました」と語っていたが、今は、その気持ちを改めている。「あの時は(等々力競技場の)5階席から聞いていてどこか他人事だったんです。でも、ピッチレベルで(サポーターの応援を)聞くという経験をして、(ウォーミング)アップだけでしたけど、こんなにも力になるのか、やってやろうって思いになるのかって感じました。ナガネがいつもはしないようなプレーをできた理由が分かりました。この声援を受けたら、できるなって」と嬉々として話すのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5