サッカーの試合には流れがある。時には、ハーフタイムを挟んでまったく反対の流れになることがある。どうしてそのような「逆転」が起こるのか。サッカージャーナリスト・大住良之が、理由を探る。
■W杯での教訓
もちろん、Jリーグだけではなく、世界のトップクラスのサッカーでも、「2つのハーフがあるゲーム」は起きる。
その好例が昨年のワールドカップ、日本代表のドイツ戦とスペイン戦である。ともに前半は圧倒的にボールを支配され、1点を先制された。しかし森保一監督はドイツ戦ではハーフタイムに久保建英に代えて冨安健洋を送り込んで「3バック」に変更して守備を安定させ、さらに後半12分に三笘薫と浅野拓磨、同26分に堂安律、同30分には南野拓実と攻撃的な選手を送り込み、その後に堂安(後半30分)、浅野(後半38分)とたたみかけて逆転に成功させてしまう。
前半のシュート数は、ドイツの14本(うち枠内4本)に対し日本は1本(枠内0本)だったのに対し、後半は12本(枠内4分)対10本(3本)と互角に近い内容になっている。驚くべき「2つのハーフ」。日本の交代策も当たったが、明らかにドイツが「ゆるんだ」ところに日本がスピードのあるアタッカーで「ゆさぶり」をかけたという形だった。
そんな「教訓」があれば、前半日本がどんなに弱く見えても気をゆるめてはいけないことなど幼稚園児にでもわかりそうだが、スペインもまんまとその「罠」にはまる。この試合では、森保監督はハーフタイムに長友佑都と久保に代えて堂安と三笘を投入、後半3分に堂安、同6分に田中碧が得点して2-1で逆転してしまう。
シュート数は、前半がスペインが6本(うち枠内3本)に対し日本が2本(枠内0本)、後半はスペイン8本(枠内2本)、日本が4本(枠内3本)。逆転してから時間が長かったため後半の後半は前半と同じような「耐える」展開になった日本代表。シュートも倍打たれたが、枠内を2本にとどめたのは、スペインにあせりが出た証拠だろう。