■何よりも必要な「想像力」
サッカーは人間がするゲームである。「チームとしての心理」は11人の心理であり、ほんの小さな変化が大きな効果を生む。
広島のミヒャエル・スキッベ監督は後半もチャンスの数では上回ったことで「後半もチームのプレーに問題はなかった」と語ったが、後半立ち上がりの5分間は明らかに名古屋の出足がよくなり、広島はそれを受ける形になっていた。その「ゆるみ」を生まないためには、「後半の相手が前半と同じだとは思うな」など、監督からの強い言葉が必要だったのではないか。
名古屋の長谷川監督は、ハーフタイムに「ホームだし全体的にもう少し頑張ろうと、優しく語りかけた」と試合後話したが、おそらく相当厳しい叱咤があったはずだ。そうした働きかけに選手たちが見事応えたのが、後半の名古屋だった。
サッカーの前半45分間での優勢は、かつてのJリーグのような「ファーストステージ優勝」ではない。「セカンドステージ」でどんな成績に終わっても「チャンピオンシップ」に出場を保証されるわけではない。前半相手を圧倒する最高クラスのサッカーができたとしても、後半に逆転を許せば「敗戦」「勝ち点0」という結果しか残らないのがサッカーという競技である。
戦術の変更、選手交代など監督の「マジック」が生む効果などたかが知れている。何よりも必要なのはピッチに立つ選手たち自身が「相手は前半とは違う」という想像力をもち、もういちど集中力を高めて後半に臨むこと。プロならそれくらいのことができなくてはいけない。そして同時に、監督たちは、「最高の内容の前半」というものがチームにとって危険極まりない「罠」であることを知る必要がある。