■清水は相手のモチベーションに気圧されている
1点を追いかける清水は、すぐに同点とする。失点から4分後の29分、山原怜音の左足シュートをGKが弾くと、詰めていたディサロがすかさずプッシュした。
しかし、同点の時間帯は長く続かない。32分、群馬MF長倉利樹がペナルティエリア内左へ侵入し、ラストパスをゴール前へ通す。逆サイドから詰めたFW佐藤亮が、フリーで難なくプッシュした。清水GK権田修一はノーチャンスだった。
試合の行方に大きな影響を及ぼす次の1点も、清水ではなく群馬に入った。後半に入った53分、右サイドからのクロスをヘディングで決められてしまった。相手のシュートが右SB岸本武流に当たり、GK権田の逆を突いてゴール内へ転がっていった。
今シーズンのJ2リーグで、清水と磐田は各チームの「ターゲット」となる存在だ。とりわけ中位から下位と見なされるチームは、「ひと泡吹かせてやろう」とか「食ってやろう」というモチベーションで挑んでくる。
選手個人にとっても、清水戦や磐田戦は「アピールの場」だ。強豪相手の試合でパフォーマンスを発揮することは、自身のキャリアアップに結びついていく。
群馬はJ1昇格の経験を持たないが、J1やJ2の上位チームへ羽ばたいた選手は多い。昨シーズンはFW山根永遠が、夏の移籍市場でJ1昇格へ突き進む横浜FCへ引き抜かれた。
開幕戦から勝利を重ねていれば、「やはり清水は強い」といった認識が広がっただろう。しかし、彼らが戦ってきた映像を振り返れば、「ボールは保持するものの仕留めきれておらず、両サイドからのクロスに気をつければ対抗できる」という現実に気づくはずだ。際どいシュートは浴びせるものの、相手ゴールをこじ開けられないというのが、現在の清水が直面する大きな課題だ。
清水が勝点を落としてきた試合が、次に対戦する相手のモチベーションに火をつける、という連鎖が起こっていると言っていい。清水は相手のモチベーションに気圧されている、と言ってもいい。
J1から降格した清水は、ルヴァンカップのグループステージに出場している。群馬戦を含めて4週連続でミッドウィークに試合が組まれており、4月22日の大宮アルディージャ戦まで9連戦(!)となっている。厳しいスケジュールのなかで、勝点を積み上げていかなければならない。
2018年以降のJ1自動昇格チームを見ると、全10チームのうち9チームは開幕から5試合までにシーズン初勝利をつかんでいる。唯一の例外は2018年の松本山雅FCで、7節に初勝利をあげた。
中2日でやってくる次節は、4月1日、ヴァンフォーレ甲府とのアウェイゲームだ。4節から3連勝を飾り、3勝2分1敗で5位の甲府との一戦を落とすようなことがあると──J1昇格に関するデータの裏づけを失うだけでなく、いよいよ底なしの沼へハマっていくことになってしまう。清水は正念場だ。