■これまでのW杯と違った「3枚のジョーカー」

 ベスト16進出への道のりも、これまでとは違った。

 18年のグループステージでも、ポーランドとの第3戦でスタメンを入れ替えている。今回はコスタリカとの第2戦でターンオーバーを敷いたが、そもそも先発起用を想定していた冨安健洋酒井宏樹遠藤航らがスタメンを外れる試合があった。グループステージの2試合に先発した久保建英も、クロアチア戦を体調不良で欠場している。クロアチア戦では板倉滉も出場停止で使えなかった。

 一時的とはいえ、スタメンで見込んでいた選手をこれだけ欠いている。そのなかで、グループステージを2勝1敗で首位通過したのだ。チーム全体の力で勝ち取ったラウンド16進出であり、過去3度とはその中身が異なる。

 もうひとつ忘れてならないのは、「逆転勝ち」である。ドイツ戦とスペイン戦では、後半の2発で試合を引っ繰り返した。逆転勝ちの経験をほとんど持たないチームが、W杯という大舞台で粘り強さとタフネスさを発揮したのである。

 その要因となったのが「ジョーカー」の存在だ。

 吉田は言う。

「4年前は時間が長引いたらキツいなという感覚だったんです。いまは長引けば長引くほど、ウチの特徴が出せる、そういう選手が揃っているなというのはあったので、チャンスは増えてくるんじゃないかなという感覚で、後ろは我慢を続けるだけかなと思っていました」

 彼が言う時間とは、「耐える時間」を指している。ドイツ戦とスペイン戦では、相手の時間をしのぐことで逆転の可能性をつなぎ、後半のギアチェンジで攻勢に転じた。18年は本田圭佑がジョーカー的に起用されたが、今回は浅野拓磨堂安律、そして三笘薫と、試合の流れを変え得るカードが3枚あった。これは、過去3度のラウンド16進出との違いにあげられるだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3