松本山雅FCのDF田中隼磨が、選手としてのラストゲームを終えた。現役最終戦でも決勝点を導き、熱いスピーチを残した男に、ファンからの称賛が止まらない。
松本山雅は17日、ひとつのニュースを発表した。今シーズン限りで、田中が引退するというものだ。
ホームタウンである松本市出身の田中は、高校時代に親元を離れて横浜フリューゲルスのユースチームに入った。横浜F・マリノスでプロキャリアを歩み始め、名古屋グランパスでもリーグ制覇を成し遂げるなど複数のクラブで経験を重ねて、2014年に松本山雅に加入。精神的にも主柱となり、2度のJ1昇格に貢献した。
近年は膝の負傷などで思うようなプレーができず、昨季はリーグ戦1試合出場にとどまった。今季も、自身初となるJ3を戦うシーズンとなったが、今月20日の最終節までベンチ入りすることもなかった。
だが、初のメンバー入りとなった相模原SCとの最終節、田中は大仕事を果たす。0-0で迎えた後半42分、田中は交代で今季初のピッチに立つ。そしてわずか3分後、右サイドでボールを持つと、左足に持ち替えてゴール前へとロングパス。ファーサイドで外山凌が折り返すと、走り込んできた中山陸が押し込み、これが決勝点となったのだ。
最終戦を勝利で終えたものの、2位の藤枝MYFCと勝点1差の4位に終わり、J2復帰はならなかった。試合後、冷たい雨が降るスタジアムで、田中が「すいません、しゃべれないっす」と言いながら、何とか言葉を絞り出した。
「今日という日が来てほしくない。ここでみんなに伝えたくない。そんな思いで先日の宮崎戦の後に決断しました」
自らの口から、ファン・サポーターへ引退を報告した。
サンプロ・アルウィンの応援は、選手の背中を強く押すと田中は語る。「たくさんのスタジアムでプレーしてきましたが、このスタジアムほどパワーがあるスタジアムはありません」。その応援の力を知るからこそ、こう訴えた。
「皆さん、選手を甘やかしてはいけないんです。ダメな時はダメだと表現してください。そうしなければ、このチームは新しい景色を見ることはできません」