■クレーベ2発!! 「引退報道」中村俊輔が黄金の左足を振り抜く!!

 66分だった。FW長谷川竜也がペナルティエリア内左に侵入し、DFの股間を抜くパスを通す。ゴール前に詰めていたのはFWクレーベだ。途中出場のブラジル人FWが、実に開幕節以来となるシーズン2得点目を左足でプッシュした。

 71分には数的優位に立つ。金沢のボランチ藤村慶太が、2枚目の警告で退場となってしまうのだ。

 その1分後、右サイドの直接FKからクレーベがヘディングシュートを決める。残り20分強で1点差だ。スタンドを“ハマブルー”に染めた8000人強の観衆と一体になって、横浜FCは金沢を呑み込んでいく。

 ここから先はワンサイドゲームとなった。FWを下げて5バックに変更した金沢に対して、横浜FCの四方田修平監督はMF中村俊輔を投入する。5月21日以来の出場となった44歳のレフティーは、長谷川とともにゴール前へクロスを送り込んでいく。FW小川航基とクレーベとともに、CBガブリエウがゴール前で待ち構えるが、相手ディフェンスの必死の抵抗にあう。

 83分にはクレーベのヘディングシュートがバーを叩く。このシーンで相手DFと接触したクレーベは、鼻を痛めてプレー続行が不可能となる。交代選手を5人使っていた横浜FCは、10人での戦いを強いられることとなった。

 人数的には同数になったものの、横浜FCが金沢を押し込む展開は変わらない。87分には中村がファウルを受けると、29メートルの距離から左足を振り抜く。カベをすり抜けた一撃が相手GKを襲うが、パンチングで弾かれた。

 観衆の声援が、拍手が、選手たちを後押しする。横浜FCは攻めた。あと少し、もう少しで得点が奪える。3点目が生まれる。後半だけで16本のシュートを浴びせたが、6分のアディショナルタイムが過ぎてもスコアは2対3から動かない。横浜FCは2連敗となり、2位が確定した。同時に、アルビレックス新潟のJ2優勝も決まった。

 キャプテンの長谷川は、「勝って終わりたかったけれど、1年間やり続けてきた結果がJ1昇格となったので、嬉しい気持ちもあります」と、悔しさのなかに安ど感をにじませた。この日は無得点に終わった小川も「このチームで昇格したいと(シーズン前の)キャンプで強く思ったので、素直に嬉しいです」と、喜びを口にした。

 40節、41節とホームで連敗を喫してしまったが、横浜FCが昇格にふさわしいチームなのは間違いない。試合後のセレモニーで四方田監督が「今日の試合に関しては反省点があるが、1年間やってきた結果がJ1昇格につながった。選手たちの頑張りとまとまりに感謝したい」と話すと、スタジアムは大きな拍手に包まれた。

  横浜FCのJ1昇格が決まった翌日、中村俊輔が今シーズン限りで引退するとの報道があった。日本サッカー界の歴史にその名を刻むレフティーが大きな決断を下したのであれば、これまで彼が成し遂げてきたもの、つかんできたものに、改めて拍手をおくりたい。

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