大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第98回「PK戦は運次第」(1)一般化のきっかけはメキシコ・オリンピック準々決勝の画像
ACL準決勝をPK戦の末に制し、喜ぶ浦和の選手たち 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、勝敗は決めるが、試合の一部ではない?

ACL準決勝でのPK勝ち

 8月25日に埼玉スタジアムで行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝、全北現代(韓国)対浦和レッズ。浦和が延長戦終了直前に追いつき、PKを制して通算4回目の決勝進出を喜んだファンは多いだろう。しかし同時に、あのPK戦のアンフェアさに、大きな疑問をもったファンもたくさんいたに違いない。

 PK戦で使われたのは、浦和のサポーターがはいった北側ゴール裏スタンドの前のゴールである。大旗をもったサポーターが何十人も最前列まで出てきて、全北のキッカーがけるときには大喚声を上げながらピッチレベルからまるでカツオの一本釣りのように上下に激しく振る。それは、守る浦和GK西川周作の目にははいらないが、キッカーにとっては甚だしく集中を妨げるものになったに違いない。

 先行の全北。一番手のMF金甫炅(キム・ボギョン)はセレッソ大阪柏レイソルなどJリーグで通算6シーズンもプレーし、浦和のサポーターの何たるかは百も承知のはずだが、ナーバスになったのか、力なく左にけり、西川にストップされて両手で顔を覆った。

 浦和の一番手のアレクサンダー・ショルツが出てくると、サポーターはすべての旗を下げて声も出さず、ショルツの集中を助けた。そしてキックがゴール左上に決まると、「一本釣りの竿」がいっせいに上げられて「大漁旗」となるのである。

 西川は次のキックも止め、4人目のキャプテン金珍洙(キム・ジンス)のキックは右ポストを叩いてゴールを外れた。浦和は3人目のダヴィド・モーベルグのキックが相手GKに防がれたが、最後は江坂任が力強く決めて5人目のキッカーを待たずに決勝進出を決めた。

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