■主審の手順は正しかったのか?

 PK戦前、イランのアリレザ・ファガニ主審は両チームの主将、浦和の西川と全北の金珍洙を呼んでコイントスを行った。勝ったのは金珍洙だった。彼は何かを選んだ。私は2回目のコイントスが行われていると思っていたのだが、両チームの主将はそれで分かれた。金珍洙が先攻を選んで、コイントスは終わったのだ。

 「主審は、その他に考慮すべきこと(例えば、グラウンド状態、安全など)がない限り、コインをトスしてキックを行うゴールを決定する。そのゴールは、安全上の理由、またはゴールもしくはフィールドの表面が使用できなくなった場合に限り変えることができる」

 「主審は再度コインをトスし、トスに勝ったチームが先にけるか後にけるかを決める」

 『サッカー競技規則2022/23』の89ページを見ると、第10条(試合結果の決定)の第3項「ペナルティーマークからのキック」の「進め方」「ペナルティーマークからのキックの開始前」にはっきりとこう書かれている。だがこのときのファガニ主審は最初のコイントスを省略し、2回目のコイントスしか行わなかった。ピッチは何の問題もなかった。なぜだったのか、私にはわからない。

 PK戦は、通常、勝ち抜き式の大会で試合が引き分けに終わったとき、次戦に進むチームを決めるための手段として行われている。これが一般化する以前は、再試合をするか、それが不可能なときには「抽選」という手段が使われていた。しかし1970年に国際サッカー評議会(IFAB)がPK戦の使用を正式に認可、以後はこの方法が使われることが多くなった。

 現在では、次戦に進むチームを決める方法は、「アウェーゴールルール」「延長戦」「PK戦」の3つのみが認められ、再試合や抽選は認められていない。ただし、グループリーグで順位を決めるときに大会規約で決められた方法(得失点差、総得点数、直接対決結果、フェアプレーポイントなど)を使ってもさらに決められない場合には、抽選で決めることがある。

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