■日本代表入りで芽生えた「責任感」
7月のE-1選手権で日本代表に招集されたことは、町野に精神的な変化を促した。
表情がグッと引き締まる。
「やっぱり責任感はあります。日の丸というものを背負ったことで、周囲の見る目もかなり変わりましたし。山口(智)監督からも、チームにいい影響を与えてほしいと言われているので、そこの責任感は出てきました」
責任感がプレッシャーへ変質することはないのだろうか。9月30日に23歳になるアタッカーは、「そこは大丈夫です」とすぐに答える。
「プレッシャーがないと、逆にダメなタイプなので。そうやって生きてきたつもりなので、プレッシャーがあればあるほどいいのかな、と思っています」
横浜F・マリノスでのプロ1年目は、公式戦に1試合も絡めなかった。翌年はJ3の北九州へ期限付き移籍し、チームトップの8ゴールをマークした。北九州に完全移籍した2020年はJ2で7ゴールを記録し、湘南への完全移籍を勝ち取った。ゴールを決めることで、キャリアアップを実現してきた。
「背水の陣じゃないですけれど、追い詰められたときに力を発揮する自信はあります。自分にもっとプレッシャーをかけてもいいのかな、と思います」
プレッシャーをエネルギーに変えていく町野は、チームにとって頼もしい存在だ。J1残留を早い段階で確定させ、順位をひとつでも上げていくためには、背番号18のゴールが不可欠だからである。
「8月21日の鹿島戦で湘南らしい戦うところ、ハードワークするところは、いままで以上に見せることができた。勝点は1しか取れなかったですけど、そういった熱いものを出すことができて、ここから勝っていくという自信が出てきました」
9月3日に行なわれた川崎F戦は、湘南らしさが発揮された一戦だった。試合前の段階で首位に立つ相手に、臆することなく立ち向かっていく。前半に先制されたものの、町野が自らつかんだPKを決めて同点とする。さらに90+3分、阿部浩之の決勝弾で2対1の勝利をつかんだのだった。
「相手より走るところ、戦うところ、気持ちで絶対に負けないところは、毎試合見せることができていると思います。去年も苦しいところから、J1残留まで持っていけました。僕らはものすごくうまくはないかもしれないですけど、必死に戦うところを出していきたいし、そこは湘南が他のチームより優っているところだと思います」