■同点のチャンスを与えてしまった川崎

 引き分けでもよい状況だった横浜としては、もう少し慎重にアディショナルタイムをマネジメントすべきだったろう。だが、攻撃的サッカーが身についている横浜は最後まで攻撃の手を緩めることができず、カウンターから川崎にゴールを与えてしまった。

 ただし、アディショナルタイムのマネジメントとしては、この試合では川崎も失敗をしていた。

 つまり、せっかく25分に山根のワンタッチでのクロスがワンバウンドするところにレアンドロ・ダミアンが頭で合わせて先制ゴールを決めてリードしていたのに、前半のアディショナルタイムに横浜の仲川輝人に同点ゴールを許してしまったのだ。

 1点リードのまま後半に入るのと、同点にされてしまったのでは、後半の進め方がまったく違ってしまう。後半のアディショナルタイムにジェジエウの劇的なゴールが決まるというエキサイティングな展開になったのは、前半のアディショナルタイムをうまくマネジメントできなかった川崎のせいだった。

 1対0で終わらせれば十分な場面。実際、川崎は慎重に試合を進めていた。

 ところが、45+3分に川崎は追加点のチャンスを作って“しまった”。

 左サイドでつないだボールをチャナティップが逆サイドの家長に大きくサイドチェンジ。家長がドリブルで持ち込む内側をMFの脇坂泰斗が、そして、外のタッチライン沿いを山根が駆け上がる。そして、家長からのボールを受けた山根がクロスを入れたのだが、それがクリアされ、横浜のエウベルに渡った時には中盤での川崎の守備は手薄になっていた。

 エウベルはマルコス・ジュニオールとのワンツーで抜け出してスピードドリブルで持ち込むと仲川に正確なスルーパスを通して、仲川が橘田健人と競り合いながらGKの鄭成龍が飛び出してくるところを正確なループシュートを決めた。

 つまり、両チームともの前後半のアディショナルタイムのマネジメントに失敗したおかげで、試合は非常に劇的な幕切れとなったのである。ある意味、「攻撃サッカー」を信条としているチーム同士らしい結末だった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4