夏の最中、日本中でサッカーが行われている。日本クラブユース選手権も、そのひとつ。準決勝の2試合を、サッカージャーナリスト・後藤健生が取材した。
■抱けなかった「やりきった感」
後半に入っても、横浜FCがパスをつなごうとし、セレッソ大阪がそのパスをカットしてゴール前まで一気にボールを送り込もうという攻防が続いた。
ところが、53分に横浜FCのDFがボールを持った瞬間に次のプレーの判断が遅れたところを、C大阪の末谷誓梧が詰めてボールを奪ってそのままゴール左下に強烈なシュートを放った。このシュートは横浜FCのGK西方優太郎が防いだが、そこで獲得したCKから192センチの高さを誇るDFの白濱聡二郎がニアで合わせてC大阪が先制した。
CKの前にボールを奪われたのは、もちろん単純なミスだったが、横浜FCはこれまでにもこうしてボールを止めてしまう場面が何度か見受けられていた。ゆっくりとパスをつなぐからこそ、常に頭を働かせて、判断だけは速くしなければならないはずなのだが……。
1点を先行された横浜FC。当然、さらに攻撃を活性化させるべきだった。テクニカルエリアの小野信義監督からも「速いテンポ!」といった声が盛んに聞こえた。だが、しかし、パススピードはなかなか上がらなかった。
また、最後の時間帯には長身DFの池谷銀姿郎やヴァンイヤーデン・ショーンを前線に上げてパワープレーを試みたのだが、それを生かすための有効なロングボールが入らず、試合はそのまま1対0で終了した。
せっかく、後方から正確につなぐテクニックを持ちながら、パススピードを上げることができず、相手にパスカットを狙われても、あるいは先制ゴールを決めても試合のテンポを変えられなかった横浜FCとしては反省点だらけの試合だったのではないか。
横浜FCは、せっかくのボールキープをチャンスに繋げられなかったのである。
一方、結果として勝利して決勝進出を決めたC大阪側にとっても、横浜FCのゆっくりとしたパスをカットしたり、あるいはCKを獲得した場面のように相手チームのボールの処理が遅かったところにつけ込んで攻撃の形を作れたが、あくまでもリアクションの形でしかなかった。
C大阪も正確なロングボールと前線の選手のテクニックという特徴を生かして、自分たちでパスを回して攻撃の形を作る主導権を取ったポジティブなゲームをしたかったはずで、こちらも「やりきった感」は抱けなかったのではないだろうか。