■パラグアイ戦で伊藤洋輝が代表デビュー
ブラジルとの対戦へ、準備は整った。
6月2日に行なわれたパラグアイ戦は、収穫の多い一戦となった。
3月の最終予選以来となった一戦は、選手たちにとって日本代表のコンセプトを呼び覚ます機会である。6日のブラジル戦への助走として、主力選手を使いながら新たな組合せにトライしたのは、この試合の位置づけとして妥当なものだった。森保一監督は基本システムの4-3-3を組み、GKシュミット・ダニエル、CB谷口彰悟、MF原口元気、鎌田大地、FW三笘薫、堂安律を先発させた。吉田麻也と遠藤航が前半だけで退いたのは、コンディションを考慮したものだった。
そのうえで、4対1の勝利をつかんだのだ。カタールW杯南米予選で8位に終わり、新たな目標へ動き出した相手を、前半から圧倒しての快勝だった。
まず触れるべきは伊藤だろう。
今回の招集メンバーで唯一の初選出となったこの23歳は、4バックの左SBで起用された。馴染みがないわけではないが、本職でもないポジションで、伊藤ははっきりとした存在感を発揮する。
利き足の左足から繰り出すフィードは、ストレート系とカーブ系のように球質を使い分けることができ、なおかつレンジが広い。1本のフィードでサイドを変えることができ、球速のあるパスは受け手に時間的余裕を与える。左利きなので、フィードに際してボールを持ち直す必要もない。
攻撃参加もスムーズだった。同サイドの三笘を追い越す動きで、フィニッシュにつながるラストパスも供給している。「効果的な関わりができるように」と話したように、三笘がドリブル突破するスペースを消してしまうことなく、タイミングと距離感を考えてサポートしていた。
186センチの高さを生かして、リスタートからはゴールを狙った。攻撃のセットプレーで制空権を争うのは、これまで吉田、冨安健洋(あるいは彼に代わるCB)、酒井宏樹、遠藤の4人だったが、伊藤が加わることでターゲットがもう一枚増える。変化をつけることができる。
左足による中長距離のフィードと空中戦の高さは、左SBで序列最上位の長友佑都にはないものだ。さらに、三笘を効果的にサポートできるとなれば、長友を脅かす存在に浮上する。