5月29日に行なわれたJ1リーグ第16節では首位だった鹿島アントラーズに3-1で勝利し、現在、7勝5敗4引き分け、6位につけるFC東京。
同クラブは今季、IT大手の株式会社ミクシィの子会社として新体制に移行し、クラブとしてもチームとしても変革に動き始めている。野心あふれるプロジェクトを取り仕切る頭脳が、今季から新たにゼネラルマネージャー(以下、GM)に就任した山形伸之氏だ。
海図を描き、船の行き先を示す司令塔は、なぜアルベル・プッチ・オルトネダ監督(以下、アルベル監督)を招聘したのか。そこには首都・東京にふさわしい青赤軍団となるため、娯楽性に満ちたサッカーを見せなければいけないという、確固たる信念が潜んでいた。(#1~3のうち2)
■山形伸之 やまがた・のぶゆき■ 1970年東京都世田谷区生まれ。2017年、DMMによるシント=トロイデンVVの買収と経営に参画。クラブ買収時には現地に飛び、元オーナーと直接交渉にあたる。2019年12月から日本企業、株式会社ナッツアンドアバウトが買収したポルトガル2部のUDオリヴェイレンセ社長に就任した。2021年9月、UDオリヴェイレンセ社長を辞任。2022年1月、FC東京ゼネラルマネージャーに就任。
■ヨーロッパのクラブに伍していくために
世紀をまたいでからの現代サッカーは日進月歩。Jリーグでも数年前からポジショナルプレー以後の知見が浸透し、世代やクラブをまたいで平準化しつつあるが、欧州に比べるとやはりワンテンポ遅くなることは否めない。
特にFC東京の場合は2022シーズンが改革元年となり、川崎フロンターレや横浜F・マリノス、サガン鳥栖などの後塵を拝する状態からのスタートとなるだけに、国内で優位に立つためにも欧州のトップを見据えてその差を縮める意識が必要だ。山形GMは欧州と日本のサッカーの進度の差をどのように受け止めているのだろうか。
「最近では内田篤人さんや酒井高徳選手が言及していますが、ボールに対するインテンシティの高さ、デュエルのところに違いがあると思います。常に相手に圧力をかけられるような攻撃なり守備に関しては、私も欧州とは差があると思っています。そういったヨーロッパのスタンダードをいちばん表現できるクラブになりたい、という願望はすごくあります。
ゴールキーパーのところで言うと、今シーズンは新たにヤクブ・スウォビィク選手が加入しましたが、決して波多野豪選手が劣っているわけではなく、優れているところはたくさんあるんですよ。ただやっぱりゴールマウスを守るということに対するヨーロッパのスタンダードは、日本にはないものです。『マウスを守るという点において』彼(スウォビィク)がヨーロッパの高いレベルでのスタンダードだと思うんですね。
しかし、日本人GKで195センチ以上のサイズがあり、かつ足元の技術がある選手は波多野豪選手しかいないと私は思っています。今後、日本を背負っていく存在になるためにもスウォビィク選手から欧州スタンダードを学べることは大きなプラスだと思いますし、我々アカデミーとしてもそういうところを意識して育成をすることが大事になっていく。そのような多様性がクラブを成長させるのだと思います」(山形GM、以下同)