■レオの「敵に回した時の厄介さ」
試合前、そんな愛憎と尊敬が混ざったアウェイチームへの感情にピッタリの曲に乗せてラインナップが読み上げられると、鹿島サポーターから大きな拍手が起こった。
読まれた名前はレオ・シルバ。2017年から昨年まで5シーズンに渡って鹿島でプレーしたブラジル人ミッドフィルダーは、今シーズン名古屋に移籍。この日がカシマサッカースタジアムへの凱旋となった。
J歴代屈指のボランチである彼の実力を誰よりも知っている鹿島サポーターと選手たちは、敵に回した時の厄介さを90分間感じ続けることになった。
3バックの名古屋は、レオ・シルバをアンカーの位置で起用。金崎夢生が最前線から体を寄せ、稲垣祥と仙頭啓矢がレオ・シルバの前で関所となる守備は中央での攻略が難しく、鹿島は常本佳吾と安西幸輝の両サイドバックに、ミッドフィルダーのファン・アラーノとアルトゥール・カイキ、さらには上田綺世と鈴木優磨の2トップまでがサイドに開いてチャンスを作り出す戦い方になった。
しかし、チャンスを作り出すためにサイドに人数が増える代わりに、最後の局面で3バックに対し常に数的不利な状況となってしまい、ゴールには至らず。
レオ・シルバはポジション的にはアンカーではあるものの、攻守で大きく動いた。それはアンカーのセオリーから外れているようにも見えたが、丸山祐市、藤井陽也、中谷進之介の強力3バックにウイングバックが加わって5バック化する名古屋では、攻守で大きく動くことが大きすぎるリスクにはならず、ただただ鹿島にとって厄介であり続けた。