■遠藤と中山の得点でホーム初勝利をあげた

 試合後の記者会見に臨んだ原崎監督は、「今日の試合に関しては、昨日が3.11という、我々にとっては意味の深い大事なゲームだったので、今週の頭から選手とも『この試合は絶対に勝ちにいく』といったなかで臨みました」と切り出した。13時過ぎにキックオフされた岩手戦は、3対0の勝利に終わっていた。

 前半43分に遠藤康が先制の左足ミドルを突き刺し、後半に入った67分と70分に中山仁斗が連続してネットを揺らした。前半と後半の序盤に訪れた危機はGK杉本大地を中心にしのぎ、ホームで初めて勝点3をつかんだのだった。

 3.11の記憶を観る者にも呼び覚まし、当事者としての決意を新たにする一戦に勝利したのは、もちろん価値がある。主将の梁勇基は「今日の試合に臨むにあたって色々な思いがあって、一番欲しかった勝点3が取れたのは良かった」と、率直な心情を明かした。水戸から加入後初の複数得点を記録した中山も、「絶対に勝点3を取らないと、という気持ちで臨んだ」と振り返った。

 そのうえで、ベガルタの選手たちは勝利に浸ることなく、これからの戦いを見据えていた。

 今シーズン初先発でフル出場したフォギーニョは、「自分たちが目ざしているものを達成するためには、ホームゲームの勝点3は不可欠。ホームで勝利することで自信も生まれる。今日の勝点3は価値があると思います」と、チームのパフォーマンスをたたえた。ブラジル人ボランチが言う「目ざしているもの」は、もちろんJ1昇格だろう。自身シーズン2点目となる先制弾を叩き込んだ遠藤は、連勝の必要性を説く。

「連勝をどれだけ積み上げられるか。そこがすごく重要になってくると思います。この先もっとしんどい試合もあると思いますが、そういう試合を取れるようにやっていきたいですね」

 次節はモンテディオ山形とのアウェイゲームだ。みちのくダービーを争うライバルも、J1昇格を現実的なターゲットとしている。山形戦の次はFC町田ゼルビア、さらには大分トリニータヴァンフォーレ甲府と、J1昇格へしのぎを削っていく相手との直接対決が続く。

 クロスゲームの連続が予想されるなかで、岩手戦はチームの拠りどころになるかもしれない。J1での躍進を知る梁は、「今日の試合に臨んだ姿勢をベースにするべき。それができれば結果がついてくる。まだまだ良くなる」と話した。2011年や12年のチームがそうだったように、チームが一体となって困難に立ち向かっていく姿勢をスタンダードとすることで、40歳の経験者はJ2を勝ち抜いていきたいと考えているのだろう。

杜の都の玄関、仙台駅  撮影/戸塚啓
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