■英国兵とドイツ兵の「交流試合」
1914年から1918年まで主として欧州を舞台に繰り広げられた第一次世界大戦では、戦争が始まった1914年のクリスマスに休戦状態が生まれ、英国兵とドイツ兵がサッカーの試合をしたという話が長く語られている。戦争が始まり、長期化の様相が色濃くなってきたころの話である。1915年元日の『ザ・タイムズ』紙が、高名な「ライフル連隊」に従軍していた医師からの手紙を元に初めて紹介し、1960年代に英国で絵本にされたことでよく知られるようになった。
さまざまな資料や兵士が家族に出した手紙などから、このような「交流試合」は複数の場所で行われたらしい。といっても正式な試合ではない。4-1で英国が勝ったという話もあるが、実際に英国兵が塹壕からサッカーボールを持ち出してけり始めたところにドイツ兵も出てきていっしょにボールをけったというような状況だったようだ。
しかし英国兵とドイツ兵がいっしょにボールをけったからといって、平和がきたわけではなかった。数時間すると、双方の上官たちが厳しい口調で兵士たちを呼び戻した。ベルギー南部からフランス北東部にかけて互いに長大な塹壕を掘り、ドイツ軍と連合軍がただにらみ合っていた「西部戦線」の膠着状態は、なんとこの後4年間も続いた。そして「クリスマス休戦」は、以降は実現しなかった。