■「今日は生きるか死ぬか」

 そして長友はサウジアラビア戦で、自身を信じてくれた森保監督の期待に応える活躍を見せる。試合前のアップ時から、ゴール前で待つ浅野拓磨に鋭いクロスを上げていた長友。どこか吹っ切れているような感じが漂っていたが、それを証明するように魂のこもったプレーを見せつけてくれたのが、前半12分だ。

 相手ゴール前の細かいパス交換から前線に上がった長友へパスが渡る。グラウンダーのセンタリングは一度は跳ね返されものの、フィフティのボールを激しく争い、倒れたもののすぐに立ち上がり、次の選手にもプレッシャーをかけ、マイボールのスローインに持ち込んだのだ。中国戦とは明らかに違う鋭く速い動き。埼玉スタジアムには大きな拍手が響き渡った。

 その後も何度も左サイドを駆け上がる長友。それが実を結んだのは後半5分。中盤で自軍がボール奪取したのを見るや否や、南野の外側にダッシュ。南野からのパスはやや弱く、相手DFが詰め寄ってくるも、長友はいち早く左足でクロス。それが伊東に渡り、ワールドクラスのミドルシュートにつながったのだ。その後も、自軍でのヘディングクリアからそのまま一気に加速、南野の外側を駆け抜け、それによりマークが緩くなった南野がミドルシュートを打つという場面もあった。

 後半23分に中山と交代した長友だったが、守備も含め、この日は大一番、サウジアラビア戦の2-0の勝利に大きく貢献したといえるだろう。試合後のオンライン取材の場で長友は、笑顔を見せながらも切実な思いを話していた。「たくさんいただいた厳しい批判が、僕の心に火をつけてくれた」と語りながらも、「今日は生きるか死ぬかだなと。今日できなければ代表にいる意味ないなと思っていたので」と、まさに背水の陣で臨んでいたことを明かしたのだ。

 そして、改めて「W杯で戦いたい」という思いを熱く語った。

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