サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、ゴール裏で座っている人たちの話。彼らが切り取る「芸術品」は、国境も時代をも超えていく。
■アルフィエリ一族の源流はどこに?
父リカルドがディエゴ・マラドーナのデビューから引退までを取り続け、彼の代表的なプレー写真を数多く残したように、息子マウロはリオネル・メッシのデビューからずっとこの天才を追い続けている。そしていつの日か、「孫」のマウロも祖父や父に劣らない「伝説の一枚」をものにするに違いない。そしてマウロの息子は…? ドン・リカルドが偶然に引き寄せられて『エル・グラフィコ』で写真を撮り始めた1936年以来、「アルフィエリ」の名前は、アルゼンチンのスポーツ写真と切り離すことのできないものになっているのである。
ところで気になるのは、「ドン・リカルド」はどんなインスピレーションを受け継いできたのかということだ。彼の両親の職業などはわからないが、すくなくとも写真家ではない。だがひとつヒントになりそうな人物がいる。「ウサブロー・キクチ」。1903(明治36)年、岩手県遠野市生まれ。若いころに単身アルゼンチンに移住した人物である。