■「企業の論理」が忘れていたもの
唯一消えたのは横浜フリューゲルスである。JSL時代の全日空を母体としてプロ化したクラブは、1998年秋に突然横浜マリノスとの合併を発表、実際には吸収される形で消滅した。そしてマリノスは「横浜F・マリノス」という名称になった。
この出来事は、Jリーグの30年間のなかで最も大きな出来事だったと、私は思っている。全日空と、マリノスを運営していた日産自動車は、よくある企業の合併のように軽く考えていた。Jリーグも、川淵チェアマンも、「企業の論理」を仕方のないものだと考えた。しかしフリューゲスルにもマリノスにもそれぞれに熱烈なサポーターがいて、自クラブに愛情を注ぎ、声援を送るだけでなく、同じ横浜のJリーグクラブとして強いライバル心をもっていた。両クラブとJリーグは、それを完全に忘れていた。