■驚くほど似ている現在の「疎外」代表選手たちの心情

「事件」は、イラク戦を前にした2月9日に起こった。茨城県鹿嶋市で合宿中のメンバー8人がスタッフに断らずに夜間外出をしたのだ。その日に判明したわけではない。後にジーコ監督によって処分された8人のうち、DF山田暢久(浦和レッズ)はオマーン戦に右サイドバックとしてフル出場し、MF小笠原満男(鹿島アントラーズ)とFW久保竜彦(横浜F・マリノス)は交代出場した。そして久保は、0-0で迎えた後半のアディショナルタイム(93分)に値千金の決勝ゴールを挙げている。

 発覚したのは、3月1日に発売された写真週刊誌によってだった。8人は鹿嶋市内のキャバクラに行き(山田暢久は入店せず)、他の客とのトラブルが起きたことで「週刊誌ざた」になってしまったのだ。ジーコ監督は「規律違反を許すことはできない」と、次の代表戦、3月31日のアウェー、シンガポール戦には、この8人を招集しなかった。

 もちろん、現在の日本代表がこんな規律違反をするとは想像できない。森保一監督が選ぶからには、全員がしっかりとしたプロフェッショナル意識をもった選手のはずだし、何より、昨年来のコロナ禍のなかで外出や会食などを極端に制限され、ときには「バブル環境」のなかで周囲と一切接触せずにトレーニングや試合を続けてきた強い目的意識の持ち主ばかりである。無断外出などありえることではない。

 しかし選手の心理状態を考えれば、来年1月のウズベキスタン戦に臨む「国内組日本代表」と、2004年2月に鹿嶋市に招集された選手たちは驚くほど似ているのではないか。

(3)へ続く
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