■チームに時間とスペースを与え続けた家長

 あれほどの強さを発揮していたら、“何とかそこにもう一度アジャストできないか”と考えたくなるが、鬼木監督の選択は異なった。いさぎよく、別の戦い方を選択した。ブロックを組ませる場面も多々見られた。逃げ切るための采配も振った。選手間のポジションにも細かく指示を出した。試合中に何個も仕掛けを作って、一つ一つつぶしていった。

 何より、圧勝している場面でも、勝利をさらに手繰り寄せるために必死で審判に食い下がった。あれを見せられれば、強さの裏にある膨大な努力と緻密な想定に頭が下がるしかない。

 そして、もう一つの要素が家長昭博だ。

 背番号41は、選手が入れ替わろうとも、常にこのチームの頭脳であり続けた。前への守備はするが、後ろへの守備は強く課されていない。その負担は、インサイドハーフにのしかかる。それでも、家長のプレーとアイデアが、このチームを何度も救った。圧巻のキープ力は、チームに時間とスペースを与え、何より、他の選手が考えて動き直す機会をもたらした。

 鬼木監督が背番号41をピッチに立たせ続けたことが、その存在感の大きさの何よりの証拠だ。選手が入れ替わっても、家長がリズムを奏で続けた。王者を王者たらしめた家長こそ、今年のMVPだ。

 ベストイレブンではインサイドハーフで起用したが、この場合、マテウスにかなり走ってもらわなければいけない。それを考慮しても、家長は推したい。

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