■苦境を支え続けた名古屋ファミリーへの愛が原動力に

 近年はリーグ戦でも下位に沈むことが多かった名古屋は、2016年にはクラブ初のJ2降格に陥った。1年でJ1昇格を果たしたものの、その後も残留争いを経験。苦境が続いたなか、去年はリーグ戦を3位で終え、今シーズンのACL出場権を獲得した。しかし、強さを見せた今シーズンは、様々な大会で勝ち進んだ一方、その分、過密日程を強いられた。天皇杯で敗退し、タイトルの可能性がルヴァンカップのみになった瞬間はおそらく心身ともに大きなダメージがあっただろう。

 しかし、今大会のMVPに輝いたMF稲垣祥が「天皇杯で0-3で負けて悔しかったが、名古屋ファミリーのみなさんは、その試合中もずっと手拍子で応援してくれた。負けたのに、試合後も切り替えて頑張れとエールを送ってくれた。そんなファミリーの」と話すように、名古屋の原動力になっていたのは、苦しい時期にずっと支えてくれた名古屋ファミリーへ恩返しをしたいという強い思いだった。

 先制点を決めたFW前田直輝も、ゴール後には一目散に名古屋のサポーターのもとへと走ったが、「どんな時でも支えてくれた名古屋のファミリーに、一番に喜びを伝えたかった。“こいつ、誰だ?”というところからはじまって、それでも僕を受け入れてくれたので、(ゴール後には)体が勝手に動いて、そっちに向かっていましたね」と話す。

 フィッカデンティ監督は、試合後の会見で、こうした一体感のある思いを「愛」と表現した。「私も日本で8年間やってきて、名古屋も再建するところから始まったが、日本への愛がなければ結果を出すことはできなかった。(コロナ禍の)こうした厳しい状況でサッカーをやらせてもらっていることに、私自身も選手たちも、感謝と幸せを感じている。つらいことも跳ね返すつもりでやってきた」と、胸の内を語った。

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