【「日本代表入りアピール」に成功するのは!?】「パリ五輪世代」U-22代表、アジア最終予選で「大苦戦」の森保ジャパン「超重要ポジション」注目選手【MF編】の画像
田中聡(湘南)   撮影/原壮史
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■アンカーもインサイドハーフもできる選手は?

 U―23アジアカップ予選は、J1、J2リーグの合間に行なわれる。所属クラブでの出場状況は選手によって異なるが、疲労を考慮してメンバーを使い分けていくと考えられる。そのうえで招集メンバーを見ると、システムは4-3-3が有力だろうか。

 くしくも先日のオーストラリア戦で、森保監督が4-3-3を採用した。遠藤航がアンカーポジションに入り、守田英正田中碧がインサイドハーフに立った。オーストラリア撃破の原動力となったこのトライアングルを基準にすると、パリ五輪世代にも多くの資質が要求される。

 アンカーでも前へ飛び出していくことができ、インサイドハーフでもアンカーの守備力を発揮しなければならない。どちらの役割にも対応できる選手としては、田中聡(湘南)があげられる。

 2種登録だった昨年からJ1のピッチに立ち、3-4-2-1のシステムでアンカーとインサイドハーフで起用され、場合によっては3バックの左サイドでもプレーしてきた。このところはアンカーを定位置とし、強度の高い守備から攻撃のきっかけを作り、最前線まで飛び出して得点を奪うなど、可動範囲を確実に拡げている。同じ湘南の育成組織から海外へステップアップし、日本代表で絶対的な存在となった遠藤の若き日を想起させる19歳だ。

 パリ五輪世代の主力格と見なされる松岡大起は、ディフェンスに軸足を置いたボランチだ。19年にサガン鳥栖史上初となる高校3年でのトップ昇格を果たし、J1リーグのピッチで経験を積んできた。

 今夏に完全移籍した清水エスパルスでも、ボランチのポジションを確保している。ボール奪取からビルドアップまでのクオリティは申し分ないが、J1通算85試合出場で得点を決めていない。相手ペナルティエリア付近での仕事量とその質を高めていくことが、これからの課題になってくる。

 藤田譲瑠チマ徳島ヴォルティス)も、ディフェンスで強みを発揮する。ナイジェリア人の父を持つこの19歳は、ボールハントの能力が高い。昨年まで在籍した東京ヴェルディでは、アンカーを定位置に41試合に出場した。ボールホルダーに素早くアプローチし、奪ったボールをテンポ良く配球する。攻撃へのかかわりも意識しており、試合を重ねるごとに敵陣へ飛び出す回数を増やしていった。3つのゴールも決めた。

 J1の徳島へステップアップした今シーズンは、32節終了時点で22試合に出場している。スタメンと途中出場がほぼ半分のなかで、J1での自身初ゴールはまだ決めていない。

 J1残留争いを繰り広げている徳島は、32節終了時点で得点がリーグで4番目に少なく、失点は3番目に多い。ボランチに守備の安定が求められるチーム事情はあるものの、藤田は攻撃力を数字で示していくことが必要になってくる。

 日本代表のボランチには、遠藤、守田、田中に加えて柴崎岳橋本拳人らが競い合う激戦区だ。DF登録の板倉滉や中山も対応可能で、ここから割って入るのは簡単ではない。

 だからといって、五輪世代の活動で満足してもらっては困る。

 世界へ目を向ければ、18歳でユーロと東京五輪に出場したペドリ、17歳でスペイン代表デビューを飾ったガビのような選手がいる。日本のパリ五輪世代には、「自分が日本代表をカタールへ連れていく」といった当事者意識を持ってほしいのだ。

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