■『光る看板、シルエットの選手たち』

 2008年の東アジア選手権で衝撃的なシーンに出合った。この大会は2月に中国の重慶で行われたのだが、連日霧に悩まされた。昨年11月にオーストリアで行われた日本代表メキシコ代表の試合ほどではなかったが、メインスタンドで見ていると、バックスタンド側のタッチラインの選手の背番号などはほとんど見えない状態だった。

 そんななか、ただひとつ光彩を放っていたのが、バックスタンドの中央に置かれた広告看板だった。この大会では、大半の広告看板が旧来の「固定式」だったのだが、中央の2枚だけが電光式になっていた。霧で全体にうすぼんやりとしたスタジアムのなかで、この2枚の広告看板だけが圧倒的に存在を主張する。その前を選手が走ると、ほとんど「シルエット」にしか見えなかった。

 「『光る看板、シルエットの選手たち』は、現代のサッカーに対するサッカーの神様からの警鐘のように感じられた」と、その試合のレポートのなかで私は書いた。

 ワールドカップでは、2010年大会からデジタル電光式の広告看板が使われている。しかし広告は入れ替わるが、動画は使っていない。逆光のときにもはっきりと見えるようと電光式にしたのだろうと思われるが、動画を入れていないのは、観戦のじゃまになるからという見識の結果だろうか。それとも、スポンサーの数倍の収入をもたらすテレビ中継に気を使ったのだろうか。

 Jリーグの試合中に、ときどき、デジタル電光型の広告看板の動画に目を奪われることがある。だがそれはトップパートナーの広告ではないことも多い。注意を引かれて動画を見ると、Jリーグ自体の広告であったりする。Jリーグが、その最大の「財産」であり唯一と言っていい「商品」である試合の観戦の邪魔をしてどうするのだろう。

PHOTO GALLERY 【画像】各スタジアムの広告看板にまつわる写真
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4