大住良之の「この世界のコーナーエリアから」連載第74回「古橋亨梧選手のために、セルティックについて知っておくべき8つの事柄」(1)世界中で900万人のサポーター、「天国」と呼ばれたスタジアムの画像
白と緑に塗り分けられたセルティックの本拠地・セルティック・パークの観客席(c)Y.Osumi
【画像】壮大なスタジアム、クラブ創設者ほかセルティックにまつわる写真
あの「ユール・ネバー・ウォーク・アローン」をヒットさせた、ジェリー&ザ・ペースメイカーズのヴォーカリスト、ジェリー・マースデンが今年の1月3日に亡くなった。78歳だった。この歌はリバプールFCのサポーターソングとして知られるが、スコットランドのセルティックFCの熱狂的サポーターたちは自分たちが先に歌ったと主張している。その名門クラブに移籍していきなり立て続けにゴールを挙げている古橋享梧は、このことを知っているだろうか。サッカージャーナリスト・大住良之による今回の超マニアックコラムは、古橋の背番号にちなんで、世界中のサッカーファンから一目置かれるグラスゴーの古豪についての8つのストーリー。

■歴史があり、伝統があり、数々の伝説がある

 ヴィッセル神戸からスコットランドのセルティックに移籍したFW古橋亨梧がいきなり大ブレークし、話題を独占している。デビュー戦でいきなり得点する選手は少なくないが、10試合近くプレーしてなおコンスタントに得点を記録しているのは驚くべきことだ。

 セルティックと言えばスコットランドを代表する強豪クラブで、かつて中村俊輔が4シーズン在籍し、プレーメーカーとして、そしてFKやロングシュートなど希有な得点者としてサポーターの記憶に残るプレーをしたことなどを思い浮かべる人が多いに違いない。またある人は、サッカーでは少し珍しい横じまのユニホームに好感をもっているかもしれない。

 そのクラブに、革新的な攻撃サッカーで横浜F・マリノスを変貌させ、Jリーグ・チャンピオンに仕立て上げたアンジェ・ポステコグルー監督が就任し、古橋をFWのトップに押し立てて圧倒的な攻撃サッカーを見せ、古橋のゴールとともにサポーターを狂喜させているのは、とてもうれしいことだ。

 だが、サッカーはピッチのなかだけにあるのではない。クラブには歴史があり、伝統があり、知っておかなければならない伝説もある。そしてクラブがある町や地域で人びとの生活にどのように根差しているか、社会にどのような影響を与えているかも、理解しておかなければならない。

 何ごとにも前向きな古橋は、クラブの関係者などからとっくに聞いて知識をもっているかもしれない。しかしもしかしたら、練習でアピールし、試合でチームの勝利のために全力を尽くすことに集中するあまり、こうしたことをまだよく理解していないのではないかと、老婆心(老爺心か?)ながら気になり、古橋の背番号に合わせて、8つのテーマでごく基本的な「特別講座」を開講することにする。

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