■アイルランドからの移民救済から始まった
創立は1887年11月6日。グラスゴー市のセントメリーズ教会のアイルランド人修道士ワルフリッドがサッカークラブの創設を提唱した。彼はグラスゴー市の東部で貧しい子どもたちに食事を提供する活動をしていたが、その資金を集めるためにクラブ創設を思いついたという。ヒントになったのは、同じスコットランドのエジンバラ市でハイバーニアンというクラブが行っていたアイルランドからの移民の救済活動だった。
ワルフリッド修道士は、「セルティック」というクラブ名も自ら提唱した。意味は「ケルト人」である。かつて欧州大陸に広く分布していたが、紀元前後にローマ帝国に押し出され、ウェールズやアイルランドに追い込まれたケルト人。アイルランド人たちは、その子孫であるという誇りをもっていた。
中世になってアイルランドはブリテン島からきた貴族たちに支配され、「農奴」となっていく。さらに、敬虔なカトリック教徒だったアイルランド人たちは、プロテスタントを国教とするブリテン人たちにカトリックを禁止されるなど弾圧された。アイルランド人がつくった小麦はすべて英国にもっていかれ、アイルランド人たちは16世紀にはいってきたジャガイモを主食にしてなんとか生き延びるという状況だった。
しかし1845年から1949年にそのジャガイモが伝染病に冒されて全滅。アイルランドの農民たちは飢餓の脅威にさらされる。その結果、数十万と言われる人びとがアイルランドを出て、英国本土に、そしてアメリカなど新大陸へと渡った。その一部が、スコットランドにもきており、当然のことながら困窮していた。その貧しさを救うためのアイデアがセルティックの創設だった。