■巧みだったスペインの「二段階の守備」
守備の局面で締めさせられているから、奪ったときには陣形がかなり低くて狭い。スペインは日本を自陣に押し込んでいるので、失ったところからそのまま前向きにプレスをかけられる。どんどん人数をかけてくる。とくに失ってすぐ、ひとつ目の追いが徹底されていました。日本を閉じ込める連動した守備が秀逸でした。
狭いスペースに閉じ込められている日本は、パスコースを作ろうとしてもそのスペースすらない。ひとつ目のプレスを交わすことができれば少し時間があるのですが、多くの時間をファーストプレスで奪われたり、蹴らされたりしていました。
日本の選手が慌てて蹴る場面は、準々決勝までには見られなかったものでした。テレビで観ている僕からすると、奪った瞬間は「これまでと同じ距離感」に見えるのですが、ピッチに立つ選手は強烈な「圧」を感じていたのでしょう。
スペインは二段階の守備が巧みで、ひとつ目でまずボールに近い選手にマークへいき、周りはひとりで2人を見るような牽制のポジションを取っていました。ボールと相手選手の状況に応じて、個人個人の判断でこの形を作り出します。
この形を作ったうえで、ふたつ目は日本の選手がパスを出したその瞬間、ボールが足から離れて誰のボールでもなくなった瞬間に、受け手にプレスをかけにいくスイッチのタイミングが、どの選手もうまいのです。日本の選手たちもパスコースを作ったり、顔を出して受けに入ろうとするのですが、この二段構えの守備によってパスコースがない。出すところが絞られていって、いたるところに相手がいるから怖くてパスを出せない。パスを受けられない──という感覚に陥ったのではないかと思います。
スペインはパスをよく回せるチームで、選手はボールを回すメカニズムをよく理解しているぶん、ボールを回させない守備も上手だと思います。
人につくこと、相手をけん制すること、タイミング良くスイッチを入れることに優れているのですが、それを可能にしているのが圧倒的なボール支配率です。
相手を押し込んで、相手のカウンターを消すぐらいまで自陣に追い込む。ボールを奪われた瞬間には、自分たちの目の前に相手がいる状態で、後ろにいるとしても1トップとトップ下だけなので、そこは後ろの3人がケアする前提に立って、それ以外の選手たちはボール狩りに集中する。あの「圧」はすごいと言うしかありません。
俯瞰の視点では「そこが空いている」と指摘できるのですが、平面に立つ選手たちは相手に付かれているし、それ以外のところも消されているように見えるのでしょう。ひとりで2人見る守備が、スペインはとてもうまいのです。