試合終了のホイッスルが鳴ると、ピッチ上に残酷なコントラストが描かれた。青いユニフォームが動きを止め、崩れ落ちた。
スペインは強かった。チームとしても個人としても、クオリティの高さを見せつけた。フル代表のレギュラーを含むチームは、U―24世代のレベルを越えていただろう。
だからこそ、0対1の敗戦が悔しい。スペインの決勝点は延長後半の115分だった。ここまで耐えたのは、称賛されていい。同時に、土壇場で試合を動かすスペインに、世界トップクラスのクオリティを見せつけられたとも言える。
グループリーグからサッカー批評Webで解説をしてきた、川崎フロンターレのレジェンドで元サッカー日本代表の中村憲剛さんは、この一戦をどのように見たのだろう。選手心理を読んだ客観的な視点に立ちつつも、ひとりの指導者としての熱い思いが込められた解説をお届けする。
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死闘でした。金メダル候補の強豪スペインに対して、日本はいまできることは全力でやったと思います。
ただ、限界以上のものを引き出されてもまだまだ差はある、という現実を突きつけられた印象です。選手たちはピッチ上で、手応え以上にその差を感じたのではないでしょうか。
この試合はスペインのキックオフで始まりましたが、開始から3分ぐらいまではほとんどボールに触らせてもらえませんでした。準々決勝までの日本はある程度主導権を握る戦いをしてきましたが、直前のスペインとのテストマッチの経験から、ボールを握られるとイメージして臨んだと思います。
ただ、試合が始まってみての肌感覚で、選手たちは「テストマッチのスペインとはまた違う」という思いを抱いたに違いありません。