■ずっと危険だった左CBパウ・トーレスとペドリのライン
日本の選手たちはスペインが相手なだけに、いつも以上にパスコースを狭める守備から入っていました。これだけ選手間の距離を締めていればパスを入れられないだろうという立ち位置を取っても、スペインはその間に鋭いパスを当たり前のように通してきました。
このクオリティに日本の選手たちの警戒は、さらに高まりました。入れられてしまうので、さらに間を締めなければいけなくなります。でも、中を締めれば締めるほどいろいろなところが空いてくる。この時点で、ここまでの守備戦術の要であった「前線からのプレス」を積極的に行なうことは難しくなってしまいました。
振り返ればユーロでも、スペインはどんな相手にも自分たちのスタイルを貫いていました。準決勝こそイタリアに敗れましたが、内容的にはかなり上回っていた印象です。GKのウナイ・シモン、CBのエリック・ガルシアとパウ・トーレス、攻撃陣のペドリ、ダニ・オルモ、オヤルサバルはユーロのメンバーで、彼ら以外にもフル代表に招集されている選手がいます。日本が対峙したスペインは、間違いなく世界のトップクラスです。
守備ブロックを締めてもどんどんボールが入ってくるので、最終ラインは下げさせられる。ペナルティエリアの前で止めるしかなくなる。それに伴いダブルボランチも下げさせられ、前線も下がらざるを得ないのです。
自分がマークするべき選手に自分の背中に立たれ、そこへパスを通され、前を向かれてしまう。マークをしているつもりなのに、自分が無力化させられる感覚だったと思います。相手に前を向かれて自分が置き去りにされる状況は、守備側からすると絶対に避けなければならない。そうさせないために、ラインを下げざるを得ないのです。そうすると、相手のCBは必然的にどんどんフリーになる。
とくにすごいと思ったのは、左CBのパウ・トーレスです。クラブでもユーロでも良い選手だなと感じていましたが、率直に驚かされました。
マンツーマンでマークをしておかないと、こちらが突かれたくないポイントに立つ選手に、鋭いクサビのパスを当たり前のように刺してきます。日本の選手がそれをけん制する動きをすれば、プレーの選択を変えることもできる。彼からペドリのラインは一番危険で、ペドリが交代するまでは見ていてホントに厄介でした。